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2013/11/10

【グルジア/ トビリシ】ワイン無料&温泉という危険な街で好きな画家を見つけた

グルジアの画家・ニコピロスマニ。素朴でパースの狂った絵が諸星大二郎を連想させる

またもや旅行者用語の解説から入ろうと思う。

“沈没”という旅行者用語を知らない方も多いと思う。文章としての初出は旅ライターの大御所・蔵前仁一さんや前川健一さんなのかもしれない。

“沈没”とは長期旅行者が旅をしていて一つの場所に長居をしてしまうことだ。どれぐらいを長期というのかは本人次第だが、だいたい1週間から数カ月におよぶ。

僕らの旅は基本的に“前のめり”だったので、沈没したことはなかったが、ここで初めてその気分だけは味わうことができた。

グルジアの首都・トビリシでは結局5泊してしまった。毎日起きるのは昼の12時過ぎ。なぜなら、明け方近くまでフリーワイン(宿に無料のワインが付いている)を飲んでしまうのだ。

腫れぼったい目のまま、毎日教会や美術館に出かける。

古めかしい建物の美術館。ここに素晴らしい絵が眠る

ここでとても斬新な画家を見つけた。彼の名はニコ・ピロスマニ。この街の路上の土産物屋で画集が売っているぐらいグルジアでは知られた画家だ。

1862年生まれの彼はグルジアの田舎町で育ち、独学で絵を描いた。一時はロシア画壇に認められもしたのだが、結局は稚拙な絵と判断され、生前光を浴びることはなかった。

死後、彼の絵は評価され、今では国民的画家になっている。

彼が恋した女優を描いた作品。恋人をこういう風に描いて、相手に愛は伝わったのだろうか

ニコの絵を一目見ただけで、そのかわいらしさと独特のディフォルメに惚れてしまった。

これもグルジアの良さである。


ある日宿から地下鉄の駅に向かっていると自動車の修理工場の男が手招きをしている。どうやらワインを飲んでいるらしい。その日も二日酔いだったのだが、僕も宴に混ぜてもらった。

言葉が通じないままどんどんと飲まされる。この国民性が大好きだ

市場でよく見かけるグルジア名物。木の実をぶどうの甘い液で固めたものらしい。
食べてみたがそんなにうまいものではない

別の日はビアスタンド(立ち飲み屋)で昼からビールを飲んでいたら、隣のオジサンがイワシの薫製をくれた。ラブグルジア!! 酔っ払いに優しい国に悪い国はない。

もらったイワシで瞬く間にビールをたいらげる


さらに居心地の良さを感じるのは、ここにハマム(銭湯)があることだ。

ハマムの外観。年期は入っているが、内部はそれほど汚くはない

料金は男3ラリ(180円)女2ラリ(120円)。男の方には2メートル×3メートルほどの浴槽がある(女性側は浴槽なし)。
ほかに出しっ放しのお湯シャワーが10台ほどある。そこはかとなく硫黄の香りがする。きっと温泉なのだと思う。
嫁の情報によると女性の下の毛は全剃りだったとか。男の方もおじいちゃんは毛を全部剃っていた。
肩まで熱いお湯に浸かると大概の日本人は嫌なことをすべて忘れてしまう。

温泉、フリーワインの宿、酔っ払いに優しい国民性。

この3つがあって沈没しない旅人はいないのではないだろうか。ある意味、危険な街ナンバーワンのトビリシであった。

トルコを越えたのにまたもやヨーロッパ風の街並み

昼酒に浮かれ踊る人。治安の悪さは全く感じなかった

骨董市では、東欧風のキッチュな小物類が充実していた

■グルジア/トビリシ安宿情報

名前:Hostel Georgia(ホステルジョージア)
住所:Georgia,Tbilisi,20 Chitaia str
Tel:99955434725

・ダブルルーム・ホットシャワー、トイレ共同・wifiあり・キッチンあり。夕ご飯付きワインは飲み放題
・予約なしの飛び込み。ひとり8ラリ(480円)ドミトリーもあり
・トビリシ鉄道駅から徒歩10分ほど。鉄道駅に地下鉄があり旧市街まで10分
・ほぼ日本人宿。臨時の管理人が日本人だった
・トビリシ鉄道駅のターミナルを出る。鉄道駅を背に左手側(南)に歩く。ターミナルを下りてさらに左手の線路沿いの道を南下。2ブロック行くと二手に分かれるので右折。次のブロックを渡った右端の鏡張りになって、鉄格子のあるところがホステルジョージア。

2013/11/08

【グルジア/メスティア&ウシュグリ】“秘境”に誘われて…復讐の塔とチャチャと結婚式。あと、愛。

たくさんの塔が不思議な景観をつくりだす美しき田舎・メスティア

温かくておいしいスリコ&メディコの家に激しく後ろ髪をひかれながら、
次に目指したのはグルジア北部の山中にある村「メスティア」。
ヨーロッパ最後の秘境といわれる「ウシュグリ」へ向かう拠点となる場所だ。

クタイシからは、マルシュルートカと呼ばれる乗合いタクシーで約6時間。
メスティアまでの道のりだけでも十分に美しく壮大な景色が続く。

メスティアの宿泊先はまたしても民家。
メディコに紹介してもらった通称「ナジの家」にお世話になった。
これまたやさしい家族で、言葉は通じないけどいつも私たちを気遣ってくれるお父さんとお母さん(ナジ)、
(多分)末っ子のアニー15歳は美人で賢い、上のお姉さんはやんちゃな子ども2人のお母さんで……、
そのほか、従弟やら親戚やらが行き来する大家族の家だ。

ご夫妻といたずら盛りの孫2人。
家族のプライベートエリアに突然入ってくる旅行者をやさしくもてなしてくれる素敵な家。

リビングに唯一ある薪ストーブで暖をとる。
奥のキッチンでおいしい家庭料理が作られ、ソファではナジが編み物をし、ストーブからは焼きたてのパンが出てくる。

民泊でうれしいのが朝夜のおいしい料理。野菜をふんだんに使った手の込んだ温かい料理にもてなされる。
もちろん毎回自家製ワイン付き。朝食からボトルいっぱいの白ワインが出てくる酒豪大国。

メスティア自体は、「きれいな自然と気のいい人々が自慢です」といった感じの本当にのんびりした場所。
特に人通りもにぎやかさもないメイン通りを歩けば、豚や牛が闊歩している。

特徴的なのは、各家に併設されている「塔」。
食品貯蔵庫か何かかと思っていたが、実はここスワネティ地方に伝わる
ちょっと穏やかではない風習「血の掟」による「復讐の塔」と言うらしい。

“家族が誰かに傷つけられた場合、家族総出で復讐すべし”という掟があり、
塔は、その復讐から家族を守るために建てられているのだとか──。

実際、村単位での争いに発展することもあったそうで、
こんなのんびりした村の血なまぐさい話にびっくりさせられた。
しかし、家族全員で塔にこもったら、それはそれでむしろ攻めやすくなるのでは!?など疑問は残るが、
いまもなお残る塔の存在に(使われてはいない)、何か思いをはせずにはいられなくなった。

村の中心にある公園を我がもの顔で歩く豚。ブヒブヒ。

一家に一台の塔。どんだけ復讐劇があるんだ!?

かつては恐ろしい歴史を持ち、現在はのどかなメスティアから「秘境・ウシュグリ」を目指すには、
タクシーをチャーターする必要がある。
秘境なのにタクシーで行けちゃうのである。
片道約3.5~4時間、でこぼこの山道を行く。ほかの旅行者とシェアできると安上がりなのだが、
メスティアの村中ではほかの旅行者を1人も見ることがなかったので、
私たちはクタイシから一緒に移動してきたMさんと3人で車を借りた。
(1台150ラリ=約9000円となかなかの値段。村のインフォメーションでは要領を得なかったため、ナジの娘さんに頼んでもらった)

ウシュグリへの道中。牛がうろうろしている。
車内にはドライバー・ジョージ(26歳)。お気に入りの地元ソングが流れる。

途中で立ち寄った川原に残された「復讐の塔」。

中に入ってみた。ここでジッと家族で復讐から身を隠すのか…。

そして……これが秘境といわれるウシュグリ。

廃屋となった塔がたくさんある。

秘境…

…秘境

秘境!?
犬がたくさんいて、タロ・ジロごっこができます。

厳しい雪山をたたえる秘境。
…秘境というより「長野の田舎with塔」という感じ。夏場は一面緑に覆われ、すばらしい景色だそうです。

幾度となく他民族に支配されてきたグルジアでは、
古くからキリスト教が人々の心のよりどころとなってきた。

メスティアの丘の上に建つ小さな教会からも、
長く人々が往来する歴史が感じられ、独特の荘厳さを放っていた。

教会の入り口。

中に入る前に腰巻が渡された。

グルジアのイコンは素朴な絵が魅力。
※写真はメスティアのミュージアムで撮影(入場料1人5ラリ=約300円)

メスティアではもうひとつ楽しい体験があった。
秘境・ウシュグリへ行く以外は、リビングで子どもと遊びながらご飯の時間を待つだけの私たちを、
「従兄弟の結婚式があるから一緒に来ないか」とお父さんが誘ってくれたのだ。

一日中今か今かと待っていたが、「さぁ行こう」と声をかけられたのは夜8時近く。
真っ暗な道を歩いていくと、広場に仮設の大きなテントが張られ、村人が続々と集まってきていた。

テーブルにごちそうがセッティングされたテント内。
近所のおばさんたちがせっせと料理を運び、最終的には村人でぎっしりになった。

結婚式のごちそう。

新郎新婦が登場!そして、踊る!!

グルジア名物「角のコップ」で盛大にお酒を飲む新郎。

チャチャというとっても強い蒸留酒を何度も一気飲みしてご機嫌なおば様2人と、
「もっと一緒に飲みましょうよ」とからまれる夫。楽しい夜だ。

私たちの前に座っていた17歳の女子高生たち。
「赤ワインはちょっと…」といいながら白ワインをがぶ飲み。さすが酒豪大国!ラブ!

どこぞの誰かわからぬ私たちを笑顔で迎え入れ、一緒に飲もうという人々懐の広さとおおらかさ。
家族のごとく村人全員に祝福される新郎新婦の笑顔。
「愛ってきっとこれだよな」と思って胸が熱くなってしまった。
ちょっとチャチャを飲みすぎたかもしれない。

来るまで全然知らない国だったけど、「グルジア」大好きになりました。


■クタイシ→メスティア 移動情報

・クタイシのバスターミナルからマルシュルートカで約6時間(10:00→16:00)途中休憩あり
・1人25ラリ=約1,500円
・スリコの家からバスターミナルまでは、メディコが呼んでくれたタクシーで移動
 メディコが払ってくれたのか「お金はいらないよ」ということで無料
 ※タクシー運転手は金くれと言ってきたが、メディコがお金を払う必要はないと何度も言ってくれたので
  「いらないはずだよ」というと、ふら~っとどこかへ行ってしまった

■グルジア/メスティア 安宿情報

ナジの家
・スリコ&メディコの家で紹介してもらった民家
 「メスティアへ行く」というとメディコが予め電話で連絡をしてくれる(やさしい!)
・朝、夕食付きで1人30ラリ=約1,800円
・複数ベッドが並ぶ部屋がいくつかある模様。私たちはベッド2台仕切りで分けた個室のような場所に泊まった
 トイレ、シャワーは一度外に出た場所。超熱湯がちょろちょろ出るだけで調整が難しい
・村の中心まで徒歩約10分
 メスティアに着くとナジの娘さんが迎えにきてくれていた
 マルシュルートカの運転手さんも知っていて「ナジの家」というと家族に電話し、近くまで連れていってくれた

2013/11/06

【グルジア/クタイシ】 〜人間世界遺産〜スリコとメディコ夫妻の歓楽宿

丘から見下ろしたクタイシの町。どの家も自家製ワインを作っている

人間世界遺産!? そんなものがあるのかは知らないが、桂米朝師匠のような人間国宝がいるなら、この宿のホスト・スリコ(人名・男)&メディコ(人名・女)夫妻は“人間世界遺産”にふさわしい。

旅人たちを何十年も楽しませてきた酒宴の席の芸とおもてなしの心が、スリコとメディコ夫妻の宿を世界遺産と呼ばせるに至ったのだ。


その前にグルジアとは、1991年にロシアから独立した国で、英語名はジョージア。ワイン発祥の地といわれている。

飲んべえな旅友達から「フリーワインの安宿がある」との情報を受け取り、酒に目のない僕たちはこの国を急遽予定に組み込んだのだった。


トルコのトラブゾンを20時に出たバスは国境の手続きを終え、翌朝3時(グルジア時間5時)にクタイシに着いた。


グルジアのイミグレは横浜トリアンナーレのような中途半端な現代芸術風

本当になにもない道端で下ろされ途方に暮れる

下ろされた場所が聞いていたマクドナルドとカジノがある場所ではなく。夜道のなにもないところであった。

ひと気もなにもない。とにかく光のある方に歩き出すと、暗闇から馬のいななきが聞こえる。馬が起きて、立ち上がってくる。まさか襲っては来ないだろうが、恐怖感はある。

馬を刺激しないよう、そっと歩いていると、コンビニのような商店が見えてきた。ここまで全く人がいないので、開いている商店の前で朝を待つことにする。


店の前に座っているとパンの配達のおじさんが商品のパンをくれた。この国の第一印象は最高!!

1時間ほどたち夜も少し明けてきたころ、店の人にセントロ(真ん中)を聞いて歩き出す。15分ほど歩くとガソリンスタンドの向こうに銀行(ATM)があり、お金を下ろすことができた。

そこでタクシーを拾い、『メディコ&スリコの家』を告げる。迷いながらもタクシーは宿の前に着いた。

朝早いので申し訳なさげに、ドアの前に立つと、スリコおじさんが手招きをしてくれた。半地下のような部屋に通される。柿と緑の実をたくさんくれて、さらには角のコップにワインだ。これが“人間世界遺産”スリコ劇場の幕開けである。


いきなり自家製ワインの蔵に案内され、問答無用に飲まされる

ほぼ徹夜だったので、昼過ぎまで眠り、起きると昼食が用意されていた。しかし、これが昼食兼夕食。昼の14時から夜中12時までの宴会となったのであった。

豪華な昼ご飯。メディコおばちゃんは一日中料理を作ってくれる

楽しげに飲む嫁。もちろん置けないコップだが、幸せそう

僕もサムライの絵が書いてある帽子をかぶらされ、床にある酒を口でつまんで一気飲みをさせられた

乾杯をして、一杯飲むごとに抱き合う。スリコとの距離がどんどん近くなっていく

酔っぱらうとスリコは妻のメディコにキスを求める。この夫婦仲も世界遺産だ

結局2泊している間は飲み続けた。日本人4人と韓国人2人の酒が強いメンバーで良かった

とはいえ、二日酔いの頭のまま、一応観光もした。クタイシの教会は美しい。

自然の中に現れる荘厳な教会

ヨーロッパとはひと味違う重い十字架が立っていた

ここに来るまで、存在すら知らなかった国・グルジア。スリコ&メディコ夫妻のおかげで、僕のオススメの国ナンバーワンはグルジアになった。

■グルジア/クタイシ安宿(民家)情報


名前:スリコ&メディコの家
住所:民家なので控えます(写真にはありますが……)
・ダブルルーム・ホットシャワー、トイレ共同・wifiなし・キッチンどころかメディコが朝、夕作ってくれます。ワインは飲み放題
・予約なしの飛び込み。ひとり30ラリ(1800円)
・バスターミナルから徒歩30分ほど。真ん中の広場からは徒歩10分
・人間世界遺産になるぐらい二人は親切
・バスターミナルからセントロの広場を目指す。セントロの広場からトビリシ通りの81と83の間を目指す。そこを左折した右手6番のところ。セントロの手前からタクシーで7ラリ(420円)