グルジアの画家・ニコピロスマニ。素朴でパースの狂った絵が諸星大二郎を連想させる |
またもや旅行者用語の解説から入ろうと思う。
“沈没”という旅行者用語を知らない方も多いと思う。文章としての初出は旅ライターの大御所・蔵前仁一さんや前川健一さんなのかもしれない。
“沈没”とは長期旅行者が旅をしていて一つの場所に長居をしてしまうことだ。どれぐらいを長期というのかは本人次第だが、だいたい1週間から数カ月におよぶ。
僕らの旅は基本的に“前のめり”だったので、沈没したことはなかったが、ここで初めてその気分だけは味わうことができた。
グルジアの首都・トビリシでは結局5泊してしまった。毎日起きるのは昼の12時過ぎ。なぜなら、明け方近くまでフリーワイン(宿に無料のワインが付いている)を飲んでしまうのだ。
腫れぼったい目のまま、毎日教会や美術館に出かける。
古めかしい建物の美術館。ここに素晴らしい絵が眠る |
ここでとても斬新な画家を見つけた。彼の名はニコ・ピロスマニ。この街の路上の土産物屋で画集が売っているぐらいグルジアでは知られた画家だ。
1862年生まれの彼はグルジアの田舎町で育ち、独学で絵を描いた。一時はロシア画壇に認められもしたのだが、結局は稚拙な絵と判断され、生前光を浴びることはなかった。
死後、彼の絵は評価され、今では国民的画家になっている。
彼が恋した女優を描いた作品。恋人をこういう風に描いて、相手に愛は伝わったのだろうか |
ニコの絵を一目見ただけで、そのかわいらしさと独特のディフォルメに惚れてしまった。
これもグルジアの良さである。
※
ある日宿から地下鉄の駅に向かっていると自動車の修理工場の男が手招きをしている。どうやらワインを飲んでいるらしい。その日も二日酔いだったのだが、僕も宴に混ぜてもらった。
言葉が通じないままどんどんと飲まされる。この国民性が大好きだ |
市場でよく見かけるグルジア名物。木の実をぶどうの甘い液で固めたものらしい。 食べてみたがそんなにうまいものではない |
別の日はビアスタンド(立ち飲み屋)で昼からビールを飲んでいたら、隣のオジサンがイワシの薫製をくれた。ラブグルジア!! 酔っ払いに優しい国に悪い国はない。
もらったイワシで瞬く間にビールをたいらげる |
※
さらに居心地の良さを感じるのは、ここにハマム(銭湯)があることだ。
ハマムの外観。年期は入っているが、内部はそれほど汚くはない |
料金は男3ラリ(180円)女2ラリ(120円)。男の方には2メートル×3メートルほどの浴槽がある(女性側は浴槽なし)。
ほかに出しっ放しのお湯シャワーが10台ほどある。そこはかとなく硫黄の香りがする。きっと温泉なのだと思う。
嫁の情報によると女性の下の毛は全剃りだったとか。男の方もおじいちゃんは毛を全部剃っていた。
肩まで熱いお湯に浸かると大概の日本人は嫌なことをすべて忘れてしまう。
温泉、フリーワインの宿、酔っ払いに優しい国民性。
この3つがあって沈没しない旅人はいないのではないだろうか。ある意味、危険な街ナンバーワンのトビリシであった。
トルコを越えたのにまたもやヨーロッパ風の街並み |
昼酒に浮かれ踊る人。治安の悪さは全く感じなかった |
骨董市では、東欧風のキッチュな小物類が充実していた |
■グルジア/トビリシ安宿情報
名前:Hostel Georgia(ホステルジョージア)住所:Georgia,Tbilisi,20 Chitaia str
Tel:99955434725
・ダブルルーム・ホットシャワー、トイレ共同・wifiあり・キッチンあり。夕ご飯付きワインは飲み放題
・予約なしの飛び込み。ひとり8ラリ(480円)ドミトリーもあり
・トビリシ鉄道駅から徒歩10分ほど。鉄道駅に地下鉄があり旧市街まで10分
・ほぼ日本人宿。臨時の管理人が日本人だった
・トビリシ鉄道駅のターミナルを出る。鉄道駅を背に左手側(南)に歩く。ターミナルを下りてさらに左手の線路沿いの道を南下。2ブロック行くと二手に分かれるので右折。次のブロックを渡った右端の鏡張りになって、鉄格子のあるところがホステルジョージア。
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