たくさんの塔が不思議な景観をつくりだす美しき田舎・メスティア |
温かくておいしいスリコ&メディコの家に激しく後ろ髪をひかれながら、
次に目指したのはグルジア北部の山中にある村「メスティア」。
ヨーロッパ最後の秘境といわれる「ウシュグリ」へ向かう拠点となる場所だ。
クタイシからは、マルシュルートカと呼ばれる乗合いタクシーで約6時間。
メスティアまでの道のりだけでも十分に美しく壮大な景色が続く。
メスティアの宿泊先はまたしても民家。
メディコに紹介してもらった通称「ナジの家」にお世話になった。
これまたやさしい家族で、言葉は通じないけどいつも私たちを気遣ってくれるお父さんとお母さん(ナジ)、
(多分)末っ子のアニー15歳は美人で賢い、上のお姉さんはやんちゃな子ども2人のお母さんで……、
そのほか、従弟やら親戚やらが行き来する大家族の家だ。
ご夫妻といたずら盛りの孫2人。 家族のプライベートエリアに突然入ってくる旅行者をやさしくもてなしてくれる素敵な家。 |
リビングに唯一ある薪ストーブで暖をとる。 奥のキッチンでおいしい家庭料理が作られ、ソファではナジが編み物をし、ストーブからは焼きたてのパンが出てくる。 |
民泊でうれしいのが朝夜のおいしい料理。野菜をふんだんに使った手の込んだ温かい料理にもてなされる。 もちろん毎回自家製ワイン付き。朝食からボトルいっぱいの白ワインが出てくる酒豪大国。 |
メスティア自体は、「きれいな自然と気のいい人々が自慢です」といった感じの本当にのんびりした場所。
特に人通りもにぎやかさもないメイン通りを歩けば、豚や牛が闊歩している。
特徴的なのは、各家に併設されている「塔」。
食品貯蔵庫か何かかと思っていたが、実はここスワネティ地方に伝わる
ちょっと穏やかではない風習「血の掟」による「復讐の塔」と言うらしい。
“家族が誰かに傷つけられた場合、家族総出で復讐すべし”という掟があり、
塔は、その復讐から家族を守るために建てられているのだとか──。
実際、村単位での争いに発展することもあったそうで、
こんなのんびりした村の血なまぐさい話にびっくりさせられた。
しかし、家族全員で塔にこもったら、それはそれでむしろ攻めやすくなるのでは!?など疑問は残るが、
いまもなお残る塔の存在に(使われてはいない)、何か思いをはせずにはいられなくなった。
村の中心にある公園を我がもの顔で歩く豚。ブヒブヒ。 |
一家に一台の塔。どんだけ復讐劇があるんだ!? |
かつては恐ろしい歴史を持ち、現在はのどかなメスティアから「秘境・ウシュグリ」を目指すには、
タクシーをチャーターする必要がある。
秘境なのにタクシーで行けちゃうのである。
片道約3.5~4時間、でこぼこの山道を行く。ほかの旅行者とシェアできると安上がりなのだが、
メスティアの村中ではほかの旅行者を1人も見ることがなかったので、
私たちはクタイシから一緒に移動してきたMさんと3人で車を借りた。
(1台150ラリ=約9000円となかなかの値段。村のインフォメーションでは要領を得なかったため、ナジの娘さんに頼んでもらった)
ウシュグリへの道中。牛がうろうろしている。 車内にはドライバー・ジョージ(26歳)。お気に入りの地元ソングが流れる。 |
途中で立ち寄った川原に残された「復讐の塔」。 |
中に入ってみた。ここでジッと家族で復讐から身を隠すのか…。 |
そして……これが秘境といわれるウシュグリ。 |
廃屋となった塔がたくさんある。 |
秘境… |
…秘境 |
秘境!? 犬がたくさんいて、タロ・ジロごっこができます。 |
厳しい雪山をたたえる秘境。 …秘境というより「長野の田舎with塔」という感じ。夏場は一面緑に覆われ、すばらしい景色だそうです。 |
幾度となく他民族に支配されてきたグルジアでは、
古くからキリスト教が人々の心のよりどころとなってきた。
メスティアの丘の上に建つ小さな教会からも、
長く人々が往来する歴史が感じられ、独特の荘厳さを放っていた。
教会の入り口。 |
中に入る前に腰巻が渡された。 |
グルジアのイコンは素朴な絵が魅力。 ※写真はメスティアのミュージアムで撮影(入場料1人5ラリ=約300円) |
メスティアではもうひとつ楽しい体験があった。
秘境・ウシュグリへ行く以外は、リビングで子どもと遊びながらご飯の時間を待つだけの私たちを、
「従兄弟の結婚式があるから一緒に来ないか」とお父さんが誘ってくれたのだ。
一日中今か今かと待っていたが、「さぁ行こう」と声をかけられたのは夜8時近く。
真っ暗な道を歩いていくと、広場に仮設の大きなテントが張られ、村人が続々と集まってきていた。
テーブルにごちそうがセッティングされたテント内。 近所のおばさんたちがせっせと料理を運び、最終的には村人でぎっしりになった。 |
結婚式のごちそう。 |
新郎新婦が登場!そして、踊る!! |
グルジア名物「角のコップ」で盛大にお酒を飲む新郎。 |
チャチャというとっても強い蒸留酒を何度も一気飲みしてご機嫌なおば様2人と、 「もっと一緒に飲みましょうよ」とからまれる夫。楽しい夜だ。 |
私たちの前に座っていた17歳の女子高生たち。 「赤ワインはちょっと…」といいながら白ワインをがぶ飲み。さすが酒豪大国!ラブ! |
どこぞの誰かわからぬ私たちを笑顔で迎え入れ、一緒に飲もうという人々懐の広さとおおらかさ。
家族のごとく村人全員に祝福される新郎新婦の笑顔。
「愛ってきっとこれだよな」と思って胸が熱くなってしまった。
ちょっとチャチャを飲みすぎたかもしれない。
来るまで全然知らない国だったけど、「グルジア」大好きになりました。
■クタイシ→メスティア 移動情報
・クタイシのバスターミナルからマルシュルートカで約6時間(10:00→16:00)途中休憩あり・1人25ラリ=約1,500円
・スリコの家からバスターミナルまでは、メディコが呼んでくれたタクシーで移動
メディコが払ってくれたのか「お金はいらないよ」ということで無料
※タクシー運転手は金くれと言ってきたが、メディコがお金を払う必要はないと何度も言ってくれたので
「いらないはずだよ」というと、ふら~っとどこかへ行ってしまった
■グルジア/メスティア 安宿情報
ナジの家・スリコ&メディコの家で紹介してもらった民家
「メスティアへ行く」というとメディコが予め電話で連絡をしてくれる(やさしい!)
・朝、夕食付きで1人30ラリ=約1,800円
・複数ベッドが並ぶ部屋がいくつかある模様。私たちはベッド2台仕切りで分けた個室のような場所に泊まった
トイレ、シャワーは一度外に出た場所。超熱湯がちょろちょろ出るだけで調整が難しい
・村の中心まで徒歩約10分
メスティアに着くとナジの娘さんが迎えにきてくれていた
マルシュルートカの運転手さんも知っていて「ナジの家」というと家族に電話し、近くまで連れていってくれた
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